楽天が買ったFablicってどんな会社?

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9/3、土曜日の昼下がりにこんなニュースが飛び込んできました。

www.nikkei.com

企業の買収はスタートアップについては大きな話題。しかも相手があのメガベンチャー楽天ともあれば関心度は相当なもの。

そこで今回はその買収先である「Fablic社」と買収後の動向の予想について書いていきたいと思います。

 

設立は2012年

Fablic社は2012年の4月に設立した創業4年目のスタートアップ企業。代表の堀井翔太氏は「ECナビ」などアドテク系の会社でキャリアを積んだ後、2011年には同じくアドテク系の株式会社Zucks代表取締役に就任。その1年後には元祖フリマアプリの「Fril」をリリースすることになります。

メルカリじゃなかった!?元祖フリマアプリ「Fril」

10代〜30代のスマホユーザーのホーム画面には8割くらいの確率でインストールされているんじゃないかという勢いのフリマアプリの代名詞「メルカリ」

そのメルカリよりも早く「フリマアプリ」という領域に切り込んでいったのが今回楽天に買収されるきっかけとなった「Fril」です。

「Fril」の特徴は何と言っても女性ユーザーに限定してサービスを展開していること。

ユーザーが女性だけなのはもちろん、扱うアイテムもレディースファッションや化粧品など女性に振り切った商品のみが出品されています。

 

またフリマアプリなのにフォロー、フォロワーの概念を持ち込み、出品されるアイテムがユーザー間のつながりによってコンテンツとして消費されるようになりました。

 

これは群雄割拠のフリマアプリ戦国時代において未だにどのサービスも提供できていない価値だと思います。

 

サービス初期から女性の心理をうまくキャッチした体験を提供していたんですね〜…

女性市場をがっちり掴むことはスタートアップのプロダクトはもとより、どんな業界においてもある種のセオリーとも言えるので「Fril」のような文化を醸成する仕組みはとても上手いとなあと思います。

 

女性ユーザーだけじゃない、バイカーも取り込んだフリマアプリ「RIDE」

また、Fablicはフリルだけでなく、「RIDE」というバイク関連商品に特化したフリマアプリも展開しています。

メルカリやその他フリマアプリではなかなか探しづらく、絶対的需要の高い「バイク」というジャンル。そこに目をつけたのはさすが特化型フリマアプリの祖といった感じです。

「RIDE」は現在、初期のメルカリと同じように「手数料完全無料」を謳いユーザー獲得を進めています。

ヤフオクを見ても実は「オートバイ」というカテゴリはとても活発に流通が行なわれている分野なのでヤフオクのオートバイカテゴリのリプレイス(ポジションが置き換わること)が起きれば非常に強力な事業の柱になるかもしれません。

 

 楽天はなんでFablicを買い物かごに入れた?

今回なぜ楽天はFablic買収に至ったのか。楽天楽天で「楽天市場」というECの巨大販売網を握っています。

デザイン性こそ、このスマホファーストの時代に削ぐわない旧遺物的なサービスですが、ものによってはAmazonよりも安かったり、専門的なアイテムが多かったりと楽天市場ECサイトにおいてその地位を確立しています。

そんな楽天も実はメルカリのようなオールジャンルを取り扱うフリマアプリ「ラクマ」をリリースしていますが、想像の通りあまり浸透していません。

月間流通額が100億円を超える絶対王者メルカリと比べると、フリルはカテゴリ特化で前線をしていますが、ラクマはまだまだといった印象です。

そんな楽天がライバルでもあるフリルを買収することは、フリマアプリ業界においてメルカリ1強の時代に一石を投じるアクションとも取れます。

実際にフリルユーザーとこれまでの楽天ユーザーが統合されることで流通額は成長するでしょう。

楽天はこの買収によってフリルを取り込むことで月間流通額30億円を目指すそうです。

 

Fablic社は今後どうなるの?フリルは?

楽天の完全子会社となったFablicですが、今後も引き続きフリルの開発を続けていくと思われます。

また、楽天楽天ユーザーを囲い込む重要な要素である「楽天ポイント」をフリル内でも使えるようにしていくと発表しています。

「どうせ楽天ポイントが貯まるならメルカリよりもフリルかな」というユーザーの心理が手に取るようにイメージできてしまうので楽天は強いですね。

でも、今までフリルを利用してきたユーザーは20代の情報感度の高い女性が中心。

楽天市場のユーザーと少し層が違うのでは…?という疑問は残ります。

それにブランドイメージを大事にサービス設計をしてきたフリルだからこそ、「楽天ポイント」という若干ダサいポイントシステムが加わることは世界観を壊しかねません。

今後はFablicだけでなくサービスを実際に使うユーザーが楽天の文化にしっかり迎合できるのか、といった点も気になるところです。

 

最後に

最初に言った通り、スタートアップ企業、ベンチャー企業にとって「買収」というイベントは非常に大きな関心事です。

会社にとってプロダクトをお金に変えることは何よりも正義ですが「どのような手段でお金に変えるのか」という点はそのメンバーに委ねられています。

今回、Fablicが選んだ楽天への買収という道はいくつかあるうちの一つのストーリーでしょう。

スタートアップ企業が楽天のようなメガベンチャー企業に買収されるというのはそうそうある話ではないし、今後流通を加速させていきたいFablicにとっても絶対に成功させたい買収劇だったはずです。

ただ、楽天の社風に則るとなると「社内公用語は英語になるのか」僕はそれだけが気になっています。